ホーム > 稚内新エネルギー研究会とは

稚内新エネルギー研究会とは

私たちが目指す稚内は、単なる見物客が訪れるだけの新エネルギーモデルタウンではありません。新エネルギーを導入することだけが最終目的でもありません。新エネルギー関連産業が地域に根付くことこそがわれわれの目的なのです。

雇用が生まれれば、人は自然に戻ってくる、そして、それが地球環境・温暖化防止に貢献する仕事であれば働く誇りと喜びが生まれるでしょう。

わたしたちが目指すまちづくりは、ここに住む人々が「地球環境に優しい暮らし」と「心の豊かさ」を実感できる新エネルギー最先端都市としての地域の再生なのです。

今、日本の最先端のまちがこんな夢を抱いて動いていることを、お伝えしたいと思います。

ご挨拶

私たちのふるさと稚内

稚内は古くから漁業のまちとして発展してきました。現在も水産業が基幹産業であることに変わりはありませんが、二百海里規制以前は55万トンを誇った水揚げも、2回の減船を経て、10万トン余りと低迷しています。

稚内を含む宗谷地方は国策による畑作から有畜農業への転換により、広大な牧場が広がる大規模酪農地帯でもあります。

そして、利尻・礼文サロベツ国立公園への玄関口として、また「稚内北防波堤ドーム」「宗谷丘陵の周氷河地形」という2つの北海道遺産をもつ観光もまた主な産業となっています。

ページの先頭へ

膨らむ札幌 縮む北海道

いま北海道の人口が減少する中で、札幌の人口は逆に増加しています。地方都市や町村から若者が流出し、札幌の一極集中と地方の過疎高齢化が急速に進んでいます。若者が生まれたまちを後にする理由は単なる都会への憧憬ではありません。彼らの生活基盤を支える雇用が生まれ育った町にないからです。

稚内も例外ではないのです。最盛時に5万8000を超えた人口は、4万2000を切り、現在も減少に歯止めがかかる気配はありません。地域の再生をかけた「町おこし」が自治体を中心に全国各地で展開されています。しかし、行政任せではもはや解決の糸口を見出すことができないことに人々は気づき始めています。

そして、今年3月、私たちは稚内市、企業・団体、市民からなる、まちづくり協議会「稚内新エネルギー研究会」を立ち上げました。研究会は現在、団体会員47、個人会員160で構成されています。

ページの先頭へ

風は稚内の味方

「稚内をいかに再生させるか?」
私達のビジョンの原点はこの日本最北端に吹く「風」にありました。

稚内は一年を通じて平均風速7.5メートルを超える風が吹く風の街です。この風は、漁業の町らしく、棒鱈や寒干しなど水産物の加工に利用されてきましたが、この地に暮らす者にとっては厄介者でもあるのです。

稚内市では平成9年に新エネルギー賦存量調査を実施し、風力エネルギーの豊かさが再確認されています。これまでに、稚内では稚内市、民間を事業者とする合計17基の風車が稼動しています。

2005年秋、1000キロワット級風車57基をもつ宗谷岬ウィンドファームが稼動を始め、国内最大級の風力発電基地となりました。この壮大なプロジェクトが注目を集め「風のまち稚内」を大きくPRしてくれることを私たちは期待しています。

「北海道遺産」である雄大な「宗谷丘陵の周氷河地形」に点在する建設中の風車は、どこにもない独特の印象的な景観を生み出しつつあり、新たな観光資源の誕生をも予感させています。

私たちはこれを千載一遇のチャンスと捉えて最大限に利用しつつ、まちの再生の道筋を自然エネルギーと新エネルギーの先進的かつ積極的な導入に見出そうと考えています。

ページの先頭へ

稚内からの挑戦

私たちは平成17年に、環境省が公募する「平成のまほろば事業」(環境と経済の好循環のまちモデル事業)という三ヵ年の補助事業に応募し、幸運にも採択の運びとなりました。地域エコ推進事業である委託事業と地球温暖化を防ぐ地域エコ整備事業である交付金事業あわせて一億数千万円規模(自己資金含む)の事業を行うことができました。

私たちは新エネルギーの中でもとりわけ水素と燃料電池の可能性に注目しており、事業計画の中に稚内市が保有する稚内公園の風車(225kW)と燃料電池を連携させるシステムを公園の無料休憩所に導入する事業を盛り込みました。

宗谷岬ウインドファームを含め、稚内市の風力発電量は、実に市内の年間消費電力量の約七割に達します。しかし、天候に左右され、発電量が安定しない風力発電の電気は一度すべて電力会社に売電される仕組みになっており、今のところ風車の電気を私たちが直接利用することはできません。しかし、風力発電の電気で水を電気分解して作った水素を貯蔵し、燃料電池に送れば、安定して電気と熱の二つのエネルギーが利用できます。これで休憩所内の電力や給湯を賄うとともに、まだ一般には身近でない燃料電池が体験できる学習施設として公開しています。

このシステムは、不安定とされてきた風力を安定したエネルギー源として利用できる可能性があり、来るべき燃料電池社会において私たちが目指しているエネルギーの"地産地消"への道を拓く先駆けになると期待しています。また、全国の風力発電に取り組む地域に、電力会社主導の売電ビジネスに代わる新しい風力発電の可能性を示すことにもなるだろうと考えています。

さらに、この場所に環境学習の拠点となる研修施設「風のがっこう稚内」を作りました。

「風のがっこう」は風力発電の先進地デンマークでケンジ・ステファン・スズキ氏が創設した環境教育研修センターです。現在、日本でも京都(2002年開校)と栃木(2005年開校)に「風のがっこう」があり、スズキ氏のサポートを受けながらそれぞれが独自の研修活動を行っています。

稚内は自然と向き合う漁業と酪農のまち、自然エネルギーの宝庫であり、地球環境を考える素材に事欠きません。そして、三年間の「まほろば事業」により多くの情報とノウハウの蓄積が期待できました。これらを私たちのだけの資産とせず、道内、全国そして世界の人々が稚内での学習、研修を求めて集まってもらえるような価値をもった情報と体験を提供できる「風のがっこう」にしたいと思います。そして、持続可能な社会の構築と地球環境保全に貢献できる情報発信や人材育成の拠点となる組織に育てていきたいと考えています。

ページの先頭へ

風→電気→水素→モデルタウン

私たちが自然エネルギーと燃料電池にこだわるのは、その最終ビジョンとして、展望されながら未だ未知数の燃料電池社会のモデルタウンを、他に先駆けてきちんと人が暮らす形で稚内に作りたいと考えているからです。

燃料電池社会。それはエネルギー源となる水素供給のインフラが電気水道のように整った社会です。 エネルギー源となる水素の製造には水の電気分解から化石燃料の改質まで様々な方法があり、稚内は豊富な天然ガス資源の埋蔵量が確認されているサハリンに最も近い地域です。

また、風力、酪農から出るバイオマスなど自然エネルギーを基盤としたシステムを作ることも可能です。そして、施設用地確保の容易性など立地においても稚内は有利な条件を備えた地域です。

ページの先頭へ

新エネルギーが稚内を変える

稚内に燃料電池モデルタウンを作るということは、稚内が新エネルギーの壮大な実験場となることです。それには何よりも地域の人々の理解と協力が欠かせません。そして、国、関連企業、研究機関の協力が不可欠です。私たちが始めた行動は小さいかもしれません。しかし、人任せでなく自分たちが行動を起こし、アピールしていくことで、これらの協力者を呼び寄せることができると期待しています。私たちが行動を起こすことにより、企業や研究者の注目を稚内に集め、稚内には研究開発や事業進出に有利な条件や受け入れる土壌が存在することを認識させれば、彼らは稚内をビジネスターゲット、ビジネスパートナーとして考え始めるに違いありません。そうなれば、稚内に新エネルギー研究施設や、新エネルギー関連企業の進出が可能性を帯びてくる。そのときには、4年制の大学を持ち、既に空港、港湾といった重要インフラが整備された稚内の持つポテンシャルが改めて見直されることになるはずです。最北端の稚内は、実は羽田から直行便で2時間かからないのです。

ページの先頭へ

日本のデンマークをめざして

私たちがひとつの目標としているのは、北欧の小国デンマークの試みです。

オイルショック時には、エネルギー自給率がわずか2%に過ぎなかったデンマークは、30年の間に、原発を持つことなく、エネルギー自給率140%のエネルギー輸出国となったのです。

デンマークは北海道と同程度の人口と北海道の約半分の面積の国土でありながら、風力発電を基盤としたエネルギー政策から、2001年末現在で約6500基もの風車をもつに至っています。

デンマークにおいて風力発電は一大産業となり、今や風力発電機の世界シェアは50%、Vestas社は9300人を雇用する世界最大の風力発電機メーカーとなっています。

私たちが目指す稚内は、単なる見物客が訪れるだけのモデルタウンではありません。新エネルギーを導入することが最終の目的でもありません。デンマークに倣い、新エネルギー関連産業を興し、地域に根付かせることなのです。雇用が生まれれば、人は自然に戻ってくる。そして、それが地球環境に貢献する仕事であれば働く誇りと喜びも生まれる。

私たちが目指すまちづくりは、ここに住む人々が「地球環境に優しい暮らし」と「心の豊かさ」を実感できる新エネルギー最先端都市としての地域の再生なのです。

今、日本最北端のまちがこんな夢を抱いて動き出していることをお伝えしたいと思います。

稚内新エネルギー研究会会長 長谷川伸一

ページの先頭へ